こたつで食べたいおばあちゃんのお茶うけ

冬の寒い日はこたつに入ってお茶をいただく。そんなとき欲しいのがおいしいお茶うけ。おばあちゃんがつくってくれた樽から出したばかりのみずみずしい漬物、あったかい煮物ならいうことなし!そんな手づくりのお茶うけが食べられると聞き、雪の積もる山里を訪ねました。

写真=富井昌弘

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全部黒田さんの手づくり。四角いお皿は、左から「ぺちゃ豆の甘煮」「こしょう漬けと野沢菜漬け」「芋なます」「小松菜のおひたし」。丸いお皿は、左から「こんにゃくとわかめとしめじの煮物」「ぜんまいとネマガリダケの煮物」「福神漬け」「ミックスナッツ」

福神漬けからミックスナッツまでみんな手づくり

 長野県信濃町、JR信越本線の古間駅から雪の積もった道を車でトコトコと10分ほど進むと黒田さんの家だ。
 お邪魔すると、明るいお座敷に通される。こたつの上には何やらおいしそうなものがいっぱい並んでいる。
 「うわぁ」
 思わず声が出てしまった。福神漬け、芋なます、ミックスナッツ、小松菜と白菜のおひたし、ぜんまいとネマガリダケの煮物、ぺちゃ豆の甘煮、こんにゃくとわかめとしめじの煮物、野沢菜漬け、そして、こしょう漬けだ。もちろん、すべて手づくり。つくってくれたのは黒田ユリ子さん、77歳のおばあちゃんだ。
 福神漬けは、夏に塩漬けした野菜を細かく刻んで漬けなおす。食べあきたこしょう漬けやミョウガも使う。
 ジャガイモをせん切りにして油で炒め、甘酢で味つけした芋なます。
 「ゆでてもいいけど、炒めたほうが味がいいわね。にんじんも入れるといいのよ」
 ミックスナッツは、かぼちゃの種と落花生、チリメンジャコを炒る。「砂糖に水を入れて、火を細くして気長に混ぜるの」。落花生もかぼちゃの種も黒田さんの畑でとれたもの。

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黒田ユリ子さん

 春に近所の方と物々交換した干しぜんまいと、自家製の瓶詰めのネマガリダケで煮物にする。「売っているのはもっと太いけど、私はこれぐらい細いのがおいしい」
 別名ライマビーンというぺちゃ豆。花豆よりも豆自体が薄い、ぺちゃんこなので煮えやすいのが特徴。甘く煮あがったら、最後に木べらでかき混ぜるのがポイント。「豆がちょっとつぶれて、粉っぽくなったのがおいしいから」
 こんにゃくとわかめの煮物は、黒田さんのお得意料理。「海藻は毎日食べるといいっていうから、これは本当によくつくるのよ」
 ここにあげたものは素材もほとんどが黒田さんが畑で育てたり、山で採ったりしたもの。唯一小松菜だけは、横浜に住む息子さんが送ってくれたとか。

夏のこしょう、秋の大根で漬ける「こしょう漬け」

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こしょう漬け用の唐辛子は小さめのピーマンのよう。握りこぶしのような形が特徴的で、この漬け汁もピリッとする

 さて、今回の主役はなんといってもこしょう漬け。こしょうとは、「胡椒」ではなく、実は「唐辛子」のこと。ここらでは「牡丹胡椒」というそうだ。
 この漬物は冬の寒い時期、ここに来なければ食べられない。においがちょっときつく、輸送するのに向かないうえに、こしょう漬けはこの地域でないとおいしくできないというのが何よりの理由だ。
 見た目は白い。大根のしゃきっとした歯ごたえがよく、こしょうのぴりっとした辛みと酸味がおいしい。これは今まで食べたことがない味だ。確かに独特のにおいはあるけれど、それがかえってくせになりそう。
 こしょう漬けは、夏のこしょう栽培から始まる。

つづきは、うかたまvol.5で!