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vol.8 表紙 2007 vol.8 秋

2007年9月5日発売
定価802円(税込)

田舎の本屋さんで購入する
鳴子の山の“山の米”

宮城県旧鳴子町の鬼首(おにこうべ)地区でおいしい米ができている。炊いたごはんは冷めてもかたくならないモチモチした食感。おむすびにすると抜群にうまい。「こんなうまい鬼首の米を食べたのは初めてだ」お嫁に来て50年のお母さんから出た言葉だ。この米を中心に新しい米づくりが始まっている。

写真:富井昌弘

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曽根清さん、きぬゑさん夫婦

この土地ならではの新しい米をつくろう

 鬼首生まれ、鬼首育ちの曽根清さんは10代の頃から50年以上、米をつくり続けてきた。今年、70歳。
 「米づくりはどうすっぺ、畑はどうすっぺ、お祭りはどうすっぺと、地区の心配ごとをいろいろ話し合ってきましたが、答えが見つからない。どうすっぺかなあと途方に暮れたところに、『東北181号という、寒冷地で育ついい米がある。おめ、試しにやってみねえか』といわれたわけです」
 山あいで日照時間も少ない鬼首は、同じ鳴子の町内でも特に米づくりに苦労してきた地区なのだ。そんな寒冷な土地だからおいしくできるのが「東北181号」という米だという。
 「なんぼなんだべな」と半信半疑の曽根さんだったが、この不安はうれしいことに裏切られた。まず、苗の育ちがいい! 普段つくっているあきたこまちより、太くて丈夫な苗ができたのだ。そして収穫した米を食べた人からは「寒冷地でこんなにうまいお米がとれるとは驚きです」、「お米の力を再発見しました」という感想が寄せられた。

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小昼のためのおむすびづくり。181号の水加減は普通の米の85%

 181号の独特なモチモチ感は、鬼首のように水が冷たく、気温が低いからこそできる性質だ。消費者の望む「おいしい米」は、例えばコシヒカリ、ササニシキなど、条件のよい平場で育てやすい品種ばかりで、山の田んぼでは育てにくい。だったらこの土地にあった品種はないか。そこで探しあてたのがこの181号だ。この土地ならではの新しい米を育てよう。より条件の悪い鬼首で成功すれば、鳴子全体の米づくり元気になるはず。そんな取り組みが2年目を迎える。

夏のこしょう、秋の大根で漬ける「こしょう漬け」

 小昼(こびる)というのは、農作業の合間にとる今でいうお茶の時間。お茶というより軽食に近く、鳴子では昔からおむすびなど腹持ちのいいものが用意されていた。181号は、炊きたてはもちろんおいしいのだが、冷めてもかたくならず、ふんわりしたまま。

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今日の小昼メニューは、味噌むすび、しょうがむすびのほか、山菜の煮つけ、ぬか漬けなどなど

 早朝炊いたごはんが、昼過ぎ、夕方になってもおいしく、小昼にぴったりのお米なのだ。
 まずは梅干しのおむすび。真っ白のごはんがもっちりしておいしい。うるち米ともち米の間のようなモチモチとした食感で食べ応えがある。きな粉むすびは初めての体験。きな粉の香りがいい。ちょっとの塩けと砂糖の甘さがごはんを引き立てる。ごはんってこれだけでごちそうなんだ、と実感する。

づづきは、うかたまVOL.8で!