
写真=富井昌弘 文=編集部

すっすっ、すすーっと、麺棒に生地を巻きつけながらのばしていく、その清香さんの動きはリズミカルで無駄がない。「小学生の頃から打って体に染みついているの」
明野村(現・北杜市)では、米の裏作に必ず麦をまき、ほうとうやうどん、おやきなどの粉ものがよく食べられてきた。とくにほうとうは、うどんより短時間ででき、たっぷりの具を入れた味噌汁で麺を煮込むだけなので、夕食にも手軽。かつては夕方になると、どの家からも、タンタンと麺を打つ音が聞こえ、村じゅうが味噌汁の香りに包まれていたという。
「家の農作業が忙しいときは、いつも夕食の準備をするために早く帰って手伝っていた」と清香さん。ほうとうづくりも自然と身についた。
味噌汁の具は旬のものを入れるが、山梨での決まり文句「うまいもんだよ、かぼちゃのほうとう」の通り、清香さんも「かぼちゃをたくさん入れた味噌汁で食べる、おほうとうが一番」という。
さっそくかぼちゃのほうとうをいただくと、かぼちゃの甘さと味噌の相性がぴったり。とろみのある熱々の汁にはうま味がたっぷりつまっていて、麺となじんでいる。

薄く伸ばした生地は、打ち粉をして半分に折り、それを3つ折りにして5mm幅に切っていく

汁がほとんど見えないくらい、旬の野菜を盛り込んだかぼちゃのほうとう

