気のおけない友だちの家に集まって。本家の座敷で親せきと。
飲める人も飲めない人も一緒に座って、卓上のごちそうに手をのばす。
ほどよく酔いが回ったら、誰かが歌い始めて踊りだす
楽しくふけゆく冬の夜。
写真=富井昌弘 イラスト=武藤良子
「お酒は飲めないけれど、お客さんが来るのは大好き」という智穂さんがつくるおつまみは、娘の結ちゃんにも大人にも好評
11月には初雪が降り、1月になればタイマグラはすっぽり銀世界に包まれる。氷点下20℃まで下がることのある冬は「生活の中心はストーブ」と安部智穂さん。一日中焚き続けるストーブの火を無駄にしないよう、午後になると「今日の夕飯は何をつくろう、ストーブの火をどう使おう」と頭を巡らせる。
雪深い冬はお客さんも減るけれど、来れば「ねまっとかんせ(暖まってけ)」と火のそばをすすめ、お茶を淹れたり、泊まりの人にはお酒をすすめたり。
島節を歌えば、場は一気に最高潮に。「私の方がうまいわよ」と言い合いながら、即興で歌詞をつくって歌うのも楽しみ
ブダイの干物にくさや、干し大根のそぎなど、新島ならではのおつまみがずらり。
「とくに、冬の西風がごちそうをつくってくれる」と教えてくれたのは、須貝紀代さん。新島は黒潮がもたらす海の幸や、山菜や芋など山の幸も豊富。だが魚のとれない時期もあるし、シケが続けば他所から食料を仕入れることもできない。そこで島では12〜3月頃に吹く強い季節風に魚や野菜を当て、さまざまな乾物がつくられてきた。なるほど、ごちそうの材料には保存食が多い。