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vol.26 表紙 2012 vol.26 春

2012年3月5日発売
定価802円(税込)

田舎の本屋さんで購入する
世界の母の麺

世界各地に広がった麺は、そこで新たな素材と出会い、
その土地、その家ならではの味として根づきました。
そんな母から受け継いだ麺をふるまうのは、日本で暮らす料理自慢のお母さんたち。
さて、どんなメニューが並ぶのでしょうか。

料理・お話=トラン・ティ・ハー(ベトナム)、チェ・スンミ(韓国)
写真=高木あつ子(ベトナム)、キミヒロ(韓国)
文=編集部

ベトナム
ベトナム

 ベトナム南部の海沿いにあるニャチャンは漁業の町。町のあちこちに市場があり、いつでも新鮮な魚が手に入る。麺料理に欠かせない魚醤・ヌックマムも地元で生産されているが、ハーさんのお母さんは、家で手づくりしていたという。だから麺の味は、お母さんの味だ。

 * * *

だしはカツオ、鶏、牛とさまざま
 魚のだしの麺は、母がよくつくってくれた麺。白身魚、サワラをよくだしに使います。でも一番おいしいのは生のカツオのアラでとっただし。生臭くない?って聞かれるけれど、日本でもかつお節を使うじゃない? 同じですよ。でも、ベトナムは煮干しやかつお節のような乾物はない。食材は年中手に入りますから。
――1年中、温暖ですものね。もうひとつの汁麺のだしは鶏ガラ?
 そう。市場で売っている生きた鶏を買ってきて家でつぶします。だから家庭にも普通に鶏ガラもあって、それでだしがとれる。北の方は鶏で、南の方は牛肉でだしをとることが多いですね。
――このだしに、ヌックマムが入ると、またおいしくなりますね。
 ヌックマムは味を締めます。これはカタクチイワシと塩で発酵させたもの。うちは母がつくっていました。「自分で作った方が安全でおいしい」ってね。

韓国
韓国

 韓国南部・慶尚南道(キョン サン ナム ド)の泗川(サーチョン)出身の祖父母が、当時7歳だった蔡さんのお母さんを連れて日本に来たのが大正13年。繊維関係の会社だった家は住み込みの従業員も多く、お母さんは一日中台所に立って韓国風と日本風の食事をつくっていたとか。そんなお母さんの味で育った蔡さんの麺。

 * * *

――温麺で使うのは冷麺の麺なんですね。麺が茶色なのも意外でした。
 冷麺の麺じゃなくてもいいんですよ。冷麺の麺はじゃがいもが主原料で白っぽいものと、ソバが入って茶色いものがあります。
 ピビム麺に使ったそうめんは、韓国ではソミョンといって、よく食べますね。ヂャンクッスには半田そうめんを使いました。「クッス」は麺という意味で、もとは手打ちでそうめんよりコシがあります。稲庭うどんでつくってもおいしいでしょうね。
――手打ち麺もよくつくりますか?
 今は市販品を買うことが多いですが、昔はハレの日には手打ち麺がつきものでした。長い麺は長寿をあらわし、いつまでも一緒にという意味も込めて、結婚式では必ず麺が出てきます。韓国では、「いつ麺を食べさせてくれるの?」は「いつ結婚するの?」という意味なんですよ。

その他、中国、タイ、韓国などの麺料理はうかたまvol.26で!